夜間走行時の事故と道路照明の関係。阪神高速が取り組んだ安全対策とは?
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夜間走行時の事故と道路照明の関係。阪神高速が取り組んだ安全対策とは?
夜間の走行は昼間よりも事故が起こりやすいというデータがあります。
例えば、夜間のカーブは昼間の約2.3倍の事故が起こっています。
もちろん、阪神高速でも安全対策に取り組み、
・LED照明の導入
・超高輝度標識の設置
・カーブ対策
などの施策により、事故の発生を低下させてきました。
この記事では、「運転の達人」としておなじみの阪神高速パトロール株式会社の隊員さんに、その具体的な対策の中身について伺います。
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よろしくお願いします!
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よろしくお願いします。いろいろと教えてください!
夜間に起こりやすい事故の特徴とは?
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次のグラフを見てもらうと、事故件数は減っているのに、事故率※1が増えているのがわかりますよね?
実は夜間のカーブでは、昼間の約2.3倍の事故が起こっているんです。その主な原因は何だと思いますか?- 1「事故率」とは、事故を引き起こす確率という意味で、1台の車が単位延長(1億km)を走行する間に交通事故を引き起こす回数として示します。
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そうですねえ...。やはり夜だと周りが暗くなるので、運転しているとき、周囲が見づらくなって、昼間より事故が起こりやすくなっているとか?
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正解です。でも、それだけじゃないんです。
夜間の高速道路で事故が起こりやすくなる主な理由を見てみましょう。・周りが暗くなることで、周囲が見えづらくなる
・交通量が少なくなり、スピードが出やすくなる -
そうか、交通量が減ると混雑時よりは自然とスピードが出ますもんね。
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そういうことです。それで、カーブを曲がり切れなくなってしまうケースが多くなっているんですよ。法定速度で走行するのは安全運転の基本ですが、特に夜間はその意識をいつも以上に心がけましょう。
夜間走行では落下物の接触事故も起こりやすい!?
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周囲が暗くなると、落下物が道路上にあっても見づらくなります。
またカーブのとき同様、夜間はスピードが出てしまいがちになるので、それにより落下物を避ける対応が遅くなるといったケースもよく見られます。
次のグラフを見てください。 -
落下物事故発生確率(事故件数/落下物処理数)は1日平均では3.1%ですが、夜間(17時〜23時台)になると、平均4.5%まで増加するんです。同様に、工事の車線規制帯に接触する事故も起こりやすくなっています。
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やっぱり、夜間は周囲が見づらくなる上に、スピードが出てしまいがちになるので、それがいろいろな事故の発生率を高めているわけですね。
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はい。また、工事規制の影響で速度低下した車両の末尾に追突するなどの事故も発生しています。
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夜に車を運転する時は、今まで以上に意識して、気をつけるようにします!
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こうした夜間に発生しやすくなっている事故に対して、阪神高速では様々な施策を講じています。
ここからは、そうした取り組みの実例をご紹介していきます!
安全な夜間走行を実現する阪神高速の取り組み
阪神高速の具体的な事例【山王カーブ】
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14号松原線の山王カーブにおいて、カーブの視認性を高める対策として、
・視線誘導表示
・LED回転灯の設置を実施しました。
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対策後、効果は出たんですか?
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はい。夜間での事故は対策前に比べて約1/4に減少しました!
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すごいですね。
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阪神高速では、今後もさまざまな方面から安全対策に取り組み、ドライバーの方の安全運転をサポートしていきます!
日本初、高速道路に適用できるLED道路照明を開発!
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LED照明が私たちの生活でも身近なものになってきていますが、地球環境への配慮といった観点からも、道路照明のLED化は取り組むべき課題でした。
ただ、LED照明を高速道路上に用いるには、技術的にさまざまな問題があり、その課題を乗り越えるため、阪神高速では2009年より協力企業との共同研究に取り組みました。
LED道路照明を開発するにあたり掲げられたのが、以下のポイントです。
時速60kmで走行しているドライバーにとって十分な明るさがあり、
「一部が暗く、一部が明るい」といったムラがないこと -
もちろん、これは安全面への配慮からで、経済性や地球環境への配慮はもとより、「ドライバーの安全」が何よりも重視されているわけです。
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なるほど。"明るさにムラがないこと"が大切なポイントだったんですね。
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そして、2010年10月1日、阪神高速は全国で初めて、どんな高速道路上にも適用できる基準を満たすLEDを用いた道路照明を開発しました!
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阪神高速が日本初だったんですね!
阪神高速ならではの「光の問題」とは?
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ところで、都市部にある阪神高速ならではの課題があるんですけど、なんだかわかりますか?
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うーん、なんでしょう...。
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都市部ということは、山間部などに比べて、周りも明るいですよね。
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あ、周りが明るいと、より強い照明が必要になるってことですか?
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そうなんです。周囲にネオンサインや広告塔などの明るい光があると、暗いところの落下物や障害物が見づらくなってしまうんですよ。
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そのために、強い照明が必須ということですね。
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はい。だから「周囲の灯りに打ち勝つだけの明るくてムラのない照明」が必要だったんです。
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当初のLEDの道路照明では光が弱かったから、高速道路上での実用には至らなかったけど、阪神高速さんがそれを開発されたと。
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おっしゃる通りです。というわけで、当社が独自開発したLED道路照明は、ドライバーのみなさんの安全を支えています!
夜間における案内標識の視認性向上のための取り組み
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阪神高速では、従来の標識を反射性能が高くヘッドライトでも明るく反射する超高輝度標識へ取り替えることにより、夜間における視認性の向上に努めています。
この超高輝度標識に取り替えることによって、従来必要であった標識用の照明設備が不要となり、結果として省エネルギー化だけでなくメンテンナンス工事の低減にも繋がるなどドライバーのみなさまにとってより走りやすい道路を提供できるようになりました。
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こんなに違うとは驚きです!
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それ以外にも、阪神高速では、事故多発地点などの安全対策の一つとして、点滅灯(視線誘導灯)を設置しています。
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あ、見たことがあるかもです。
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従来は固定表示色による点滅でしたが、複数の色調や点灯のパターンを一定時間周期で繰り返し表示することで、変化するものに取り換えています。
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それだと、よりドライバーも注目しますね。
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はい。いつも見慣れている点滅灯そのものに注意を払い、認識してもらおうという狙いがあります。それが結果的に安全性の向上につながるわけです。
まとめ
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夜間の走行は、昼間以上に事故が起こりやすい環境となっています。
一番の要因は、交通量が少ないことによるスピードの出し過ぎで、それがカーブや落下物との接触などの事故につながります。 -
夜間に運転するときは特に、スピードに気をつけることが大事ですね。
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阪神高速では、カーブなどの個別のポイントで視線誘導表示などの対策を通じて、事故数を削減。
また、一早くLED 道路照明の開発に取り組み、全国で先駆けて高速道路上での導入を実現しました。 -
そうした努力が、高速道路の安全を支えているわけですね。
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これからも、より良い道路づくり、そしてその維持管理に努めていきます。
ただ、何より大切なのはドライバーのみなさまの安全運転です。交通ルールをしっかり守り、安心・安全な運転を心がけましょう。